11月20日(水)にデジタル・シングル「風」をリリース。そして12月6日(金)に下北沢LIVE HAUSでリリース・ライブを控えた吉田未加バンド。今回、メンバー全員(吉田未加、Romantic、梅津拓也、星野未緒、小林弘昂)が埼玉県の某ファミレスに集合し、「風」と「香」の制作の裏側や、リリース・ライブに向けた意気込みなどを話してみました!
日本語の歌もので
ここまでスカスカっていうのが渋すぎる。
──Romantic

小林 「風」のリリースから1週間くらい経ちましたけど、反響はどうですか?
吉田 弾き語りライブで「風」を聴いてくれていた人の感想なんですけど、バンドで録音した音源は弾き語りと違って“バン!”と聴かせる部分もあったから、違いにドキッとして聴き応えがあったと言っていました。
RM 2曲ともそうだけど、特に「風」は本当にストイックな音楽だなと。
梅津 “渋ッ!”って思ったね(笑)。
RM 良し悪しじゃないけど、ここまで渋いことをやる人はいない(笑)。何が渋いのかをちゃんと説明するべきだよね。
小林 言語化できるといいよね。
梅津 まず、それぞれの音が渋い。エレピとドラムの空気感、ベースのおっさんくさい音というか(笑)。
小林 ベースはゴムの塊みたいな古い音で。
梅津 そうそう。楽器は古っぽいけど、安田くんは全体的に今っぽい2024年の音を狙ってたんじゃないかな? そんなに古くは聴こえないと思う。
RM 隙間が非常に多いですよね。特に「風」が。こういう音楽はたくさんあるけど、日本語の歌ものでここまでスカスカっていうのが渋すぎる。ギターも歪んでないと思ったら急に間奏だけめっちゃ歪むし。
小林 そうだね。そこは本当にいろんな人から言われたよ。
RM あの間奏は2曲分の歪み成分を凝縮したっていうイメージなんです(笑)。なんて言われたの?
小林 あの曲調でいきなりBig Muffの音が入ってくるとは思ってなかったみたいで、ビックリしたって。
RM あれでBig Muffってわかるの、周りオタクばっかじゃん!
小林 おとぎ話の牛尾(健太)さんから、“あれBig Muffだよね?”って言われたね。というか昨日おとぎ話と一緒だったんだけど、“サポートでは普通そういうことしないんだよ?”って注意された(笑)。
梅津 いやいや、そういうこと真っ先にやりそうな人たちじゃん(笑)!
RM この間、僕と小林くんで両国国技館に奥田民生さんのソロ30周年ライブを観に行ったんですよ。20年ぶりくらいに当時のサポート・メンバー(GOZ)が再集結したやつで。そのライブで「手紙」っていう曲を聴けたんですけど、民生さんの中でトップクラスで好きな曲なんですね。その時、「風」でやったことは「手紙」と通じる部分があるなと思ったんです。リファレンスじゃないけど、唯一何かと比べるなら「手紙」かな。
小林 未加さんは何かリファレンスとしていたものはありますか?
吉田 そういうのはないんだけど、メロウというか暖かみを出したかったのと、3拍子の曲を作りたくて。まずは“暖かみのあるコードって何だろう?”と考えて、最初「風」はAから始まる曲にしたんですね。あとはコードを少なくしてシンプルにしたかったというか。
RM Aから始まってたところを僕が変えてEmにしたから、ストイックな印象になった。
吉田 でも最初と間奏のコードしかいじってないよね? あとはデモのままだと思う。
小林 みおちゃんはどうですか?
星野 「風」はかなり良い空気感。ギュッて仕上がっていて良いと思います。目指した空気がちゃんと含まれたなって。
梅津 みおちゃんはドラムを叩く時、“◯◯っぽくしよう”みたいなのはある?
星野 この曲に関しては特になかったです。視覚的なイメージのほうが多いかも。
RM 素っぽくない? 曲調とリズムがみおちゃんっぽいよね。
星野 たぶん好きなテンポ感。
実際にライブで演奏してみたら
空気がガラッと変わるような曲になった。
──吉田未加
小林 「香」に関しては?
RM 「香」は突貫工事だったんですよね。
梅津 レコーディングの前日にできた……(笑)。
小林 マジでありえない。
RM 未加さんが作った弾き語りデモのままだと、テンポが遅くて暗かったんですよ。「風」よりもヘヴィな曲はないだろうということで、テンポをガッツリ上げてああなった感じです。いろんな要素が混ざっていて、ちょっと不思議な印象ですよね。
小林 うん。「香」はシティ・ポップなんでしょ?
梅津 和物って言ってたよね?
RM イントロはね。そういうわかりやすい感じで始めてみたんですけど、1サビ前に転調して、もうそのへんでわけわかんなくなる(笑)。
小林 Em7のところか。
RM うん。でもあそこはベースがハマった感じ。
梅津 あれ、前日にパッて弾いたやつで。でも最初は“ボン・ジョヴィみたい”って言われてさ(笑)。
小林 ベースでボン・ジョヴィってどういうこと(笑)?
RM “ウンバ、ウンバ、ウンバ”っていうやつ!
小林 「Livin’ On A Prayer」か。それギターのトーキング・モジュレーターだし(笑)。
梅津 完全にそれだったよね(笑)。だからもう少しシティ・ポップっぽくしたら、ああいうベースになったという。
小林 自分のギターは、最初はボリューム奏法かE-Bowを使ったスペイシーなフレーズしか浮かんでこなくて、めっちゃムズかった。
RM ギターがほぼ単音しか弾いてないっていう。
小林 結果的にコード・トーンを横移動で追ってるだけ。手抜きなのか、頭を使ったのかよくわからないフレーズだけど、なかなかないよね。未加バンドの曲は基本的にコードが4和音、分数コードだし、ディミニッシュもオーギュメントもバンバン出てくる。コード・チェンジも多いし鍵盤もいるから本当にギタリスト泣かせだと思うよ。
RM 未加さんの曲と自分のアレンジがロック・ギターを拒むんだよね。だからよくあるパターンの“ロック・バンドのギタリストがサポートで入って弾きます”っていうのは、かなり難しい。個人的に、こういうインディーな音楽って日本のバンドだとギターで埋めちゃうことが多いと思っていて。でもウチはドラムとベースだけでも聴けるバンドなので、上モノで埋めなくても成立するっていうのが誇りだし、それありきのアレンジになっています。そのせいでよりストイックな方向に行っているのは……どうなんでしょうね(笑)?
小林 自分としてはすごく苦しかった。ギターを入れる場所がないんだもん。逆に鍵盤はどうだったの?
RM 今回はコードを弾いてるだけですね。
梅津 安田くん、もともとピアノを弾くつもりだったけど最終的にエレピになったじゃん? ツバメスタジオにエレピが置いてあって、それがハマったからってこと?
RM はい。実は次作で何をするのかを前提に録っていたというか。今回ここまでストイックな音像になったこととか、エレピを選んだこととか、この次にいつか出るであろうアルバム的なものを考えていました。
小林 未加さんはどうやって「香」を作ったんですか?
吉田 これは最初、宇多田ヒカルさんの「Deep River」とか「FINAL DISTANCE」みたいなの感じの、すごく重たいデモを作ったんです。そのあと安田くんにサビのコードをポップに変えてもらったら一気に明るくなったし、そっちのほうが自分自身も歌いやすくなって。それとシティ・ポップみたいなアレンジにしたら疾走感が出て、実際にライブで演奏してみたら空気がガラッと変わるような曲になったので、パフォーマンスの部分でも良い要素になったと思います。このアレンジになってすごく良かった。
星野 レコーディング前日の夜11時に仕上がって、次の日のお昼から曲のイメージも全然沸かない状態で録ることになって。それで出来上がったものを聴いたら、“こんな曲だったっけ!?”って思った(笑)。
梅津 前日の夜の時点で全然仕上がってもなかったよね。“とりあえず明日!”みたいな(笑)。
小林 不安を抱えながら寝ました(笑)。
RM アドリブのぶっつけ感を含めても「香」のベースは本当に素晴らしかったですね。
梅津 本当にその場で思いついたっていう感じだったけどね。
RM いや、今回の2曲は“梅津ここにあり!”って感じでした。梅津プレイ録音の中で、ベースに限れば今回が一番なんじゃないかなと。
梅津 音は過去一で好きな音で録れたなって思う。こんなに良い音で録ってもらって、ありがとうございますという感じ。
小林 Jerry Jonesのロング・ホーン・ベースをツバメスタジオのRoyal Big Powerに直で挿しただけでしたっけ?
梅津 そう。でも基本はライン録り。シールドはツバメスタジオ君島(結)さんオススメのものを借りてラインで録って、それをリアンプしたという。プラグインのアンプも安田くんに音作りしてもらって上手く混ぜてもらって。一発だったよね?
RM はい。
梅津 安田くんが“こんな感じでどうですか?”って設定した音で、“それで録っちゃおう!”って。
星野 音決め、めっちゃ早かったですよね?
梅津 決めるも何も音作ってないからね。出たまんまの音!
RM Royalのアンプにツマミがなかったですからね。
梅津 むしろ安田くんが卓でいろいろいじっていたっていう印象。あとマイクをキャビネットと逆の方向に向けて録ってもらったりもしたけど、マイクの音はどれくらい使われてるんだろう?
RM 使ってますよ。ツバメスタジオ独特の機材とマイク・セッティングっていう感じでしたね。「風」のMVにも触れますか?
面白いものが……
観られると思います(笑)。
──星野未緒
小林 いきましょう。CULTの細川雄一郎さんが作ったMV、どうでしたか?
梅津 いや、ビックリした。
星野 怖かった(笑)。
小林 ロケハン中、細川さんも“これ完全にクスリやってる人の映像ですよ、マジで大丈夫ですか?”とか言ってましたからね(笑)。
RM 細川さん、僕、小林くん、未加さんが直接会ってしっかりミーティングをしたあとに撮ってもらったんですけど、あまりにも僕の“ストイックの部分”を抽出しすぎてくれて、本当にキレキレの音楽とキレキレの映像になってしまいましたね(笑)。攻めMAX!って感じ。
小林 混ぜるな危険だったね。ごめん。
RM 安田×細川さんは危険だったね!いきすぎた。
小林 最後はどっちかが死ぬしかない(笑)。
RM 個人的には、とても高い純度で音楽を反映した映像だなと思っています……(笑)。
梅津 でもあの映像、安田くんっぽいなとも思ったよ。
小林 高いところから街を撮るっていうのは細川さんが出したアイディアだったっけ?
RM そうだったと思う。あ、でも僕が好きなベニー・シングスの「Big Brown Eyes」っていう空撮だけのMVがあって、その話はした。今日出てきたリファレンスは奥田民生さんとベニー・シングスです。未加バンド、わりとそんな感じじゃないですか?
小林 安田くん的にはそうだね。ギター的なリファレンスは特にないです。……あ、「香」はジェフ・ベック「Cause We’ve Ended As Lovers」と布袋寅泰さん「ハウリング」のイントロかな。あとはモグワイとかそのへん。
RM 入り組んでんなぁ(笑)。
小林 最初にデモを聴いた段階でのイメージね。実際のフレーズとか出音は全然違うけど。未加さん、「風」のMVはどうでしたか?
吉田 みんなキレッキレって言ってるけど、私としては曲が活かされたなと思っていて。
RM めちゃくちゃそうなるように作りましたね。
吉田 うん。本当に飽きずにずっと観ていられるし、“次に何が出てくるんだろう?”みたいな期待もあるし。最後の大サビ以降、盛り上がっていくにつれて開けた空がバーンと映って、“曲が活きたな!”って思いました。
RM そうですね。曲に寄せることを最優先した結果、尖りまくった。
小林 一周して超サイケ。
梅津 あれはサイケだよね〜。
小林 でも海外の方からけっこう評判良いんですよ。むしろ海外の人しか観てないまである。では最後に、12月6日(金)下北沢LIVE HAUSでの「風」リリース・ライブに向けて全員一言ずつお願いします。
RM 今日ファミレスでミーティングをしているんですけど、改めてみんなでこのバンドの話や音楽の話がしっかりできたので、そういう意味ではより結束した状態で。それを感じさせられるような演奏ができたらいいなと思っています。
梅津 贅沢に感じてもらえる時間にしたいです。
小林 音楽好きなら絶対に楽しんでもらえると思いますので、“我こそは音楽好きやでホンマ!”という方に、ぜひ観に来てほしい。2024年にトム・ヨークもオアシスもレッチリも盛り上がるのはいいけど、インターネットに生息している日本の音楽好きたちには早く未加バンドを見つけてもらいたいですね。
星野 面白いものが……観られると思います(笑)。
RM す〜ごいコメントだなぁ。
梅津 たしかにそうなんだよな。
小林 全然間違ってない。
RM これじゃ来ねぇだろ(笑)。
吉田 “良い音楽が聴けて良かったなー!”と思ってもらえるパフォーマンスを届けたいです。ぜひ来てください!
吉田未加「風」Release Live

<日程>
2024年12月6日(金)
下北沢LIVE HAUS
Open:19:00/Start:19:30
<出演>
吉田未加Band Set
ニイマリコ(Loupx garoux)
<チケット>
前売 ¥3,000/当日 ¥3,500(+1D)
※23歳以下は¥2,000(当日会場にて年齢証明ができるものをご提示ください)
※前売は会場もしくはアーティスト予約のみ